音に対する戯言


http://www.youtube.com/watch?v=NtxoRjU0DvE
 「戯言」と書いたのはこれから書く事が俺の中で全く結論が出ていない事だからである。
 ブルーハーブを聞いてて改めて思った事は一つ。「これはHIPHOPでは無いな」という事だ。どちらかと言うとサイケデリックの上に置いたポエトリーリーディングだろう。HIPHOPはリズム音楽であるが、ブルーハーブに於いてリズムやミニマルは「トランス状態になる為の下地」であって、リズムを主体とした音楽では無い。昔これを聞いて結構感銘を受けたのだが、今聞くと「あ、これはサイケデリックだ」とはっきりと認識出来る。サイケデリックな人間、多分一般的に言うと麻薬を使った人間による、「そういう世界に誘う」為の音楽だ。普通の「リラックスをする」「感動する」「心おどる」音楽とはまたちょっと違うベクトルに誘うものなのだろうと思う。
 DJKrushも「その類」の音楽だ。そしてそれを聞いて育った俺が思い切り「入った」状態で弾く即興も「その類」のものだろうと思う。(ただし、俺は麻薬を使用した事は過去に無いし、これからも有り得ないと断言する)実際、ブルーハーブを数年ぶりくらいに聞いた後、俺は即座にピアノ椅子に座り即興を行ったのが、これは「即興」だった。俺が過去「自分は即興弾きだ」と嘯いてた時の、そして最近は自分の中から消え去り始めていた即興だった。ここ数年そういう要素が自分から消え去りかけていたのは、自分が常識的な人間になっていたからではないか。サイケデリックな音楽は、あまり常識的では無い。というか、むしろ狂気の産物では無いかと思う。
 何というか全く自分の中でも言語化が出来ていないのだが、自分の領域を「現世」とはちょっと違う軸にズラす事で可能になる世界というのは、確かに存在する。あー。まあ、肯定も否定もする必要は無いな。「ある」のだ。それで良いか。んで、俺は思い出したようにその領域に入る事がままある。音楽とピアノで俺は現世からズレる。
 ちなみにここ数年俺がピアノで行っていた事は「ただのジャズ」であって、こういう世界では無かったように思う。ただ、メロディの美しさを、ジャズの形態での出来上がりを「研究」していた。ジャズは実際理性的な音楽だ。だが、ジャズの「即興性」に吸い込まれてしまったものは、たまに別なものを作り上げてしまうのだろう。後期のコルトレーンやドンチェリー、そして阿部薫のように。それが一般的になる事は決して無い。