アホ抜かせや

 最近色んな仕事の嫌な話がやっと落ち着いてきて、体調も良くなってきたなあと思った矢先、ありえない訃報が届く。今はそれを聞いて、二日目。
 俺の、一番の親友である。
 どんな奴かって言うと本当に「普通」の奴だった。普通ってのは何だろう、世の中の真ん中を歩いているような、俺が思う世間の「王道」を歩いているような、そんな奴だ。それを保つためにどれだけの努力をしているか、どれだけ健全な人格を有しているか。でもそんな所は全く人に見せず、ただヘラヘラと笑っているような奴だった。
 4年前、俺が前の職場をクビに近い形でお払い箱になり、情緒不安定になっていた時に話を聞いてくれた事がある。何故か秋葉原に行こうという話になって、俺の愚痴を聞いてもらう予定が「俺、みおたんのフィギュアが欲しい」という寝言をいきなりいいはじめ、その後2時間近くアニメショップを連れまわされた事をよく覚えている。あの時は心底こいつアホだなと思いつつ、あのいちばんしんどい時期に話を聞いてくれた事ではっきりと「人生の恩人」だと認識して、それは今だってずっと思っている。
 最近は会っても本当に馬鹿話ばかりしていて、合間に仕事の愚痴を言ったりしていた。男友達で怪しい温泉旅行いこうぜーって話を去年からしていたが、その日程はなかなか合わず、結局今に至ってしまった。というか、昨日訃報を聞いた日、本当は「じゃ新年会しようぜ」という話をしようと思っていたのだ。最後のLINEは「ipadでテレビ電話って出来るの」という話だった。普通だ。見直しても、普通過ぎて感想が出てこない。
 本当に月並みだが「何かの冗談だろう」と思った。「親友が事故で亡くなるなんて」「まるで古臭い漫画みたいだ」
 今、こうやって話を「まとめる」事によって、今俺は「生き続ける」準備をしている。それをしない限り、自分がどうにかなってしまいそうだからだ。
 実際、びっくりするくらい泣いた。泣くなんて滅多にない「ものわかりの良い」俺が泣きまくっている。一人でいると少し落ち着いていても、電話をすると必ず泣いてしまう。
 今、仕事場でこれをこっそり書いているのだが、ぶっちゃけ仕事があって助かった。何もなかったら、なあ。泣くよ。でも、泣いてばかりもいられないし、とは言え「簡単に乗り越える」事にも強い抵抗がある。まだ葬式も済ませてないんだから。
 正直、心の有り所に迷っている。
 早く太郎に会いたいよ。まだ俺はメール貰っただけなんだから。あのバカめ。