人生の動く瞬間


 いや、今回は動いてないけど。
 というのもいつものように昼下がり社内ニートを満喫してた私は(注:全然楽しんでません)いきなり事務室の偉い人からおいでおいでされて、気づいたらミーティング室に二人っきりになってた訳です。偉い人、優しげな気を遣う笑顔、手元には何かよくわからん資料、「君の派遣期間は〜」という言い出し。ガチで冷や汗が噴出す。
 で、話は一番恐れてたクビの話じゃなくて、逆に採用試験の話だった。ぶっちゃけ今年は職歴も足りないだろうし今の職場のテンションも駄々下がりだったので完全に失念してた。んで要項確認したら「条件今年外れてね?」という結論で、今年はとりあえず受ける事は無理らしくて、来年も未知数。
 全然良い話じゃないんだけど、何しろその直前に俺はクビを想定してた訳で、更に一年前にちょろりと「受けるかもです」「おー」という話をキッチリ覚えてくれたのが少し嬉しかった。最近は仕事っぷりも精神状態もまあ(低空で)安定してるのだが、ちょい前まではホントグッダグダで、今だってその方向でいつクビになっても不思議じゃないと考えている。前職は何も考えずにやってていきなりアウトだったので、嫌な意味で心の準備が出来てしまっているという感じなのだ。
 で、今回はそういう話じゃなくて。まあ言ってみれば一つの可能性が閉じた訳なんだけれども、その残念さ(じわじわ来るね)と同時に「ああ、決めなければいけない時期が近づいてるんだ」という感覚が体を纏った気がした。この感覚は一昨年の11月に味わった。一昨年の5月にも味わった。自分の根元が動く感覚。日常から乖離する感覚だ。ちょっとそれが急に来たので今、その違和感に軽く戸惑っている。
 3年ルールで考えたら俺がここ去るのはあと一年半。だけれどもその前に動けるなら動いたって良いんだよなあ。最近は旅行いったりライブ行ったり、3年も続けてたレッスンが大体終わったり、随分と状況が変わってきている。年齢も来週31になる(なんてことだ)。自転車通勤とボルダリングのせいか、以前ガリガリの代名詞だった俺の体に筋肉すらついている。変わっていく。
 最近気づいたら峠の上辺りに自分がいるのを想像する。見た事の無い風景が広がっている反面、今自分が登るべき道が見えない。自分で選んで動かなければ何も進まない…。これは年齢のせいだろうか。それとも、20代の頃自分が登っていたものがある程度達成出来てしまったせいだろうか。
 昨日の晩寝ているときに急に地震で起こされた。瞬間的に「遂に来た!」と思った。人生なんていきなり動く。いきなり動くんだと言うのを、案外俺の体は知っている。