MyRomance


 また弾けなくなってる。うーむ。
 非常に難しいんだけど、アドリブをやるって事は結局の所「人に美しいメロディを聞かせる」という事なのだと思う。そして同時に「美しいハーモニーを奏でる」という事でもある。この二つは全く別の事柄である。両立させなければならない。
 ハーモニーというのは自分の楽器だけの話ではない。バッキングをしてくれるギターピアノ、ベース、ドラムと合わせて「合致する」という事だ。幸いにもジャズという音楽は「このリズムでやりますよ」「このタイミングではこのコード(和音)を元に弾いてますよ」という合図が最初から用意されているので、それに従って弾いていれば「ハーモニー」という段階はクリア出来る。これは技術の問題だ。出すべきタイミングで出すべき音を出す訓練さえしておけば、誰でも出来るようになる(と思う)。
 ただ、これとは別に各演者は「自分のメロディ」を出さなければいけない。一曲通して「俺が格好良いメロディを目指したらこうなった」というのを主張しなければならない。これは「合わせる」技術とは場合によっては相反するものだ。周りが合致させようとした音を出している時に、自分はその事を一旦忘れなければならない。
 しかしそれでも尚「合致した音」は出さなければいけない。*1なので、演奏者は「合致する事を忘れて自分のメロディを出す事に専念しつつ、それでも音を合致させる」という離れ業を目指さなければいけない。これが非常に難しい。


 例えば今やってるMyRomanceだと、コードコードで考えてフレーズを作る事なんて簡単だ。*2ただ、それにかまけていると自分の未熟さ故かつい近視眼的になってしまって、4小節、8小節でモノが考えられなくなってしまう。非常に縮こまったツギハギ音楽になるのだ。それを防ぐために、俺は曲の研究というか「流れ」の体得を練習の第一としている。コードの流れ、タイミングの時間的推移を当たり前のように受けとめ、その上で無駄の無いメロディを出す。それが理想だ。たまーに出来るようになるのだが、これをやると本当に自分の音楽が「ただ鍵盤を押して出る音」を越えた、本物のメロディになってくれて、とても嬉しい。


 しかし俺はかなりの音楽馬鹿なのでここで更に「本物のメロディを体得した上で如何にそれを出さないで済ませるか」という事にステップアップしたくなる。時々俺はセッションで「無茶無茶やってる!」と言われるような事をやったりするが、それは往々にしてこの段階を目指してやってる音楽だったりするのだ。美しいメロディをそのまま見せるだけで無く、それを見せないで間接的に浮きあがらせる。はたまたそれをスイッチして見せる。緊張と緩和。これが自由自在に出来るようになれば俺は自分の考える理想的なプレイヤーになれるだろう。しかしそれが出来るようになるにはもう一個か二個くらいは脳みそが居るんじゃねえの、とか思いつつ、また恐る恐る弾き続けていくのである。

*1:出さなくて良いタイミングもある

*2:最もこれは「前提」なので、出来てない人はこれに専念しなきゃいかん