それはカビの生えた問答


 音楽雑誌などに時々出る「貴方にとって音楽とは?」というカビの生えた質問があるが、それを「うーん、人生…かな」とか「潤いですね」とかクソみたいな答え方をするのではなく、それに真っ向から自問自答してみたくなった。「俺」という存在から通した「音楽」というものは何だろう。「音」というものをどういう風に捉えているのだろう。
 ありふれた文化的産物、という風には少なくとも考えていない。世の中に溢れるように流れているパッケージングされた「作品」を作った事は一度も無い。やろうとした事は何度もあるが、上手くいかなかった。自分は即興弾きだと思う。そこにピアノがあって、音を出したくなって、音を出す。それで自分がまず感動する。周りにいれば人も感動させる。感動させるというのは脳を揺らすという事だ。俺は「自分の音楽」というものの使い方はこれがベストじゃないかと思っている。
 暗点に関してもこのような捉え方しかしていないので、相方に「これからどうしたいんですか」と言われても全く二の句を次げなかった。音楽で飯を食うなんて考えもしなかった。だって、そんな大したものでは無い。俺にとって暗点とはそんな大層なものではなくて「相方に協力してもらって音で接客する」くらいの役割でしかない。しかしそれは俺にとって本当に本当に重要な意味合いを持つのだが、相方にはそれは納得出来ないのだろう。
「今のスタイルは内内に引きこもってるように見える」
 相方に言われたセリフである。不特定多数にアピールするとかサービスするだとか、そういう発想が根本から無いのかも知れない。