3回目


 批評する為じゃなく、咀嚼して「マッチした音楽」を作る為に何度も感想を書く。
 さすが美大生の映画、なのか、それとも「本人」を切り取った映画だからなのかはよくわからないが、この映画はやたらとリアルだ。一人の女性が何となく3人の男とイチャついてるんだけど、その内の1人が「恋愛」をしようとして、そして拒否されるという物語。「物語」と銘打ってみても、実際はその「女性」が実際経験したことを形良くまとめているだけだ。その女性役は監督であり原作者である本人が演じている。これはどこまで演技なのか。それとも「過去の自分」を切り取って再現しているだけなのか。それとも、この子の「普段」に演技が含まれてるのか。そこらへんが判断がつかないけど、画面の中では彼女の存在感が抜きん出てる。面白いね。
 何度も見るとだんだんと絵面に息苦しさを感じてくる。というのも、これはひたすら同じ視点で「彼女たち」を眺めてる映画だからだ。全てはカメラが置いている場所、「彼女の部屋」で話は動いている。そして彼女は最後、一時間かけてゴミだらけの自分の部屋で「処理」をする。これはあくまでも「部屋の女の子」の話なのだ。息苦しく曖昧で、生ぬるく優しい空間。ここを訪れる男性は皆が優しい。誰も彼女を支配しようとはしない。いや、出来ないのだろうか。映画の中の彼女はとても気だるくエロティックだな、と思ったりするのだけど、それは多分本人の気付いてない所だと思う。本人はただ「自分がいつもやってるように」しているに過ぎない。
 実際本人とはそこそこ仲が良いんだけど、何ちゅうか不思議な魅力を持った子なんだよね。特に美人というわけじゃないんだけど、どこか男をひきつける、気だるい魅力を持っている。普段は内省的で言葉に埋もれてるんだけど、その奥に官能や憂鬱がある。なるほど菊地成孔が好きになるわけだ。
 この映画はその「彼女自身」を限りなく投影したものだ。助監督が「この映画は主人公を否定するものじゃないんです」と言う言葉は重い。元カノのSさんは「自己愛だ!」て言って絶対に憤慨するなw息苦しく、気だるく、生暖かく薄い感情の園。さーて、どう音にすっかな。