暗点終了。



 しかし毎回思うが暗点ほど俺にとってシビアでそれでいて楽しいものを知らない。毎回、物凄いプレッシャーというか、責任感というか、「お前しかいないんだ」といわれている感じというか、そういうものを一身に背負って弾いている。そして、終わる。安堵する。やったという達成感と凄まじい程の誇らしさが体中を駆け巡る。

@楽譜は何も無い、それどころか何も指示も無い。それでいて「曲」としての体裁を保つために形を整えなければならない。
@当然、事前の練習が本番にそのまま反映される事など、無い。本番では常に「やった事の無いこと」を要求される。
@メロディ楽器はピアノしかない。つまり、メロディを積み上げるのは誰も助けてくれない。
@パートナーの動きを常に意識しなければならない。その上で「パートナーに乗っかるのか」「敢えて離れるのか」の選択を常に考える。
@以上を、2時間、大体10曲ほど作り上げる。同じ風に聞こえるものが一つでもあってはいけない。
@以上を、客の満足を得るよう練習しなければならない。
@以上を、個性的に演奏しなければならない。
@以上を、過去の録音とは違うものを目標として作り上げる。マンネリはあってはならない。

 こんな荒行が「当たり前」に「お茶の子」で弾けるわけないじゃんか。これ以上無いほど毎回ギリギリに弾いてますよ。即興を録音し始めて一年弱、作った曲は80曲は優にあるよ。毎回毎回マンネリと一生懸命闘ってるよ。ピアノという楽器の特性上、更に言えば「即興演奏」という音楽形態の特性上、これはやればやる程死ぬ程難しくなっていくよ。
 そうやって毎回毎回壁を越えて今に来たよ。頼むから「個性的」「癖がある」「ピアノが上手い」の一言で済ますのはやめてくれ。