日記(中間報告)



 朝、寝不足のまま親に叩き起こされて3キロ離れたトコの教会での手伝い(伴奏)を強要される。元々寝起きが悪いので死ぬ程不機嫌になる。でも何か親父が困ってるみたいだから「携帯代を所望したい」と言ったら苦い顔でオーケーされた。わたくし頬が緩んでおりましてよ。
 昨日は大学友達の小林君とギターの凄いらしい人のライブを見に行く。「ニューエイジ」というギター一本でベースラインメロディパーカッションを全部一人でやってしまう異常音楽は以前から話を聞いてはいたが、実際にライブで見るとかなりの迫力だった。パーカッションの音が思っていたよりもずっと大きい。「少し内省的で暗い音楽をやります」と言ってやった音楽が一番俺には「普通」に聞こえたのだが、それは俺が如何に内省的な音楽をやってるか他人に指摘されたような気がして少し恥ずかしくなった。そうだね。これだけじゃ駄目だね。その後やったリズミカルな曲(殴ってんじゃねえかと思うほどギターを叩きのめす)を聞いて思わず体が動く。うむ。面白い体験だ。
 その後別のギタリストと雅楽のコラボが始まる。最初はギタリストのソロ曲だった。こちらは普通に眠くなった。確かにテクニックは凄まじいものがあるのだろうが、俺には「平凡」に聞こえた。何故平凡に聞こえるのかは後述したいが、その後雅楽の女の人(笑い顔が染み付いたステキなお姉さんだった)と始めたデュオ曲では一気に目が覚める。面白い。というか、その雅楽(その時は琴だった)の雅楽出身とは思えないアグレッシブな音使いに少し毛穴が開いた。バチン!という音を出すたびに楽器が壊れないかヒヤヒヤしたが、それは俺がまだこの人の演奏を聞きこんでいないからだろう。また聞きたいなと思わせる演奏であった。ちなみにそのギタリストは一人では平凡であったが、2人になると演奏が別物に見えた。素晴らしい。やっぱ異なるジャンルのコラボは化学変化があって面白い。
 さて、帰りながら色々と俺は音楽について考えてた。その後半のギタリスト、AKIという名前は以前聞いた事があったので相当に高名かつ突き抜けている人なのだろう。テクニックは素人の俺から見ても恐るべきものだった。でも、平凡に思えた。何故か。それはキワモノを見てきた俺からすると「正道」を突っ走ってるように思えたからだ。リズムが真っ当。音も意味のある音が多すぎる。それではまだ足りないのだ。また、俺はギターを知らないので尚更「一つの音楽」として聞いてしまい、その結果ギター一本ではさすがに低音が足りないように思えた。芸術的な意味では無くあくまでも物理的な意味で、心臓に響くことが無かった。俺は色々と考えた。音楽とは世界を出すだけでは相手に届かないのだ。何か「裏づけ」が必要なのかも知れない。空気の振動という現象がどうやったら人の脳と体を揺さぶるか。そんなトコに俺は今興味を持っている。
 そして今はネットで無料公開されているZAZENBOYSのライブ盤を聴いている。この音楽が世間に認知されてきている現状に俺は少し希望を覚える。外はむわりとした陽気であった。もう夏だ。