思い出話



そういや、俺は高校の頃のテニス部では完全にお荷物の嫌われ者だった訳だけど、そこで一つ思い出した事がある。
とある部内戦のダブルスで審判をやった。片方のペアにはえらい事嫌われててもう片方はそれ程でも無かったのだが、別にそれと審判とは関係無いと思っていた。公平に審判は務めるべきだと思っていたし、たかだか部内戦如きで八百をしても何の得も無い。
ゲームは進み、お互いが白熱していた。実力はほぼ同じくらいで、点差も拮抗していた。そんな中、片方のチーム(Bとしよう)がポイントを取った時、走った勢いでネットに触れてしまった。僕はそれを気にしないで素直にポイントを計上したのだが、その時、もう片方のチームが猛烈に抗議をしてきたのだ。
「ネットに触れてるから反則だ!」
ちなみにもう片方のチーム(Aチーム)は僕を嫌っている二人である。彼らはたぶん、俺が贔屓をしていると思ったのだろう。物凄く敵意を剥き出しにした表情で俺に食ってかかった。その時俺がどんな判定をしたのかは忘れてしまったが、酷く不快な思いをした事を憶えている。
テニスのルールを厳密に知ってる訳では無いのでネットに触れたらポイントなのかどうかは未だにわからない。元々、そんなケース自体が余り無いのだ。しかし俺が感じたのは「お前らボールを返せなかったじゃねえか」という事で、そっちの方が重要な事だと思った。そして、ボールを返せない癖にポイントを求める彼らの姿は、何というか非常に「浅ましかった」。そこは不満に思ってもそこまで抗議する事ではないように思った。彼らからはスポーツマンとしてのプライドを感じなかった。
んで、俺は彼らに結果的に更に嫌われるようになった。そりゃもう、汚物を見るような目をされた。俺はそのルールが本当かどうかは知らない。でもまあ良いんだ。俺の中に厳然たる美意識があって、それが彼らを認めなかった。7年も前の話。